国会質問


道路法改正案が3月27日の衆院本会議で、日本共産党を含む賛成多数で可決し、衆院を通過しました。
現行法では、がれき撤去などの権限を国が代行するには、地方自治体の意思を尊重し、道路管理者の都道府県からの事前の要請があることを要件としています。改正案は能登半島地震の経験を踏まえ、緊急車両などの通行確保のため、国と自治体などが事前に協議し道路啓開の計画を定めることで、道路管理者の承認なく、がれき撤去などを国が代行できるようにします。
日本共産党の堀川あきこ議員は3月26日の衆院国土交通委員会で「住民の避難や物資の輸送を円滑に進めるために都道府県の承認なしに国が代行できるようになるが、実際に都道府県などに連絡せずに道路啓開するようなことはしないということか」と質問。中野洋昌国交相は「連絡は行う」と答弁しました。
また堀川氏は、従来個別に道路や下水道等の維持管理を行ってきたものを、自治体の技術系職員の不足を理由に、複数の自治体や技術者、事業者を「群」としてとらえて老朽化対策を進める「地域インフラ群マネジメント」は「苦肉の策の一つ」だと指摘。「技術系職員の確保を投げ出してはいけない」とクギを刺しました。
(しんぶん赤旗2025年4月1日付掲載)より抜粋
議事録
堀川委員 日本共産党の堀川あきこです。道路法改正案について質問します。
まず、道路啓開の代行についてです。災害に備えて道路啓開計画をあらかじめ策定していくことは重要だというふうに考えています。それは、住民の方の避難や物資の輸送を円滑にスピーディーに進めることにつながると考えているからです。
ただ、懸念があるのは、道路管理者である都道府県、市町村の承認を今回不要にしているということです。今回の法案によって設けられる道路啓開の代行は、権限は地方自治体に残したまま事実行為だけを代行するもので、現行の第十七条第七項の権限代行とは異なるものです。
この十七条の権限代行は都道府県等の要請を前提としていますが、理由を教えてください。
山本政府参考人 お答え申し上げます。第十七条七項に基づく権限代行でございますけれども、こちらは公権力の行使を伴うということでございます。
例えば、所有者の同意なく放置された車両を移動する、こうした権限を本来の管理者であります都道府県等に代わって行うということになりますので、こうした代行の必要性について都道府県等の意思を尊重するということのために、この都道府県からの御要請を要件の一つとしているということでございます。
堀川委員 基本的には道路管理者の要請というのを原則としているということだと思います。
改正案にある代行は都道府県等の承認を必要としないということなんですけれども、実際には都道府県に何の連絡もなしに勝手に道路啓開するということはないと思いますが、大臣、いかがでしょうか。
中野国務大臣 今回、道路啓開計画で国が代行するというのは、御指摘の道路法十七条の権限代行とは異なって、公権力の行使を伴うものではないということで、事実行為を対象というふうにしております。 こうした事実行為については、第十七条第七項の権限代行の場合のような告示というのは不要でありますが、第二十四条に基づいて道路管理者の承認を受ける必要がございます。
今回の改正案は、あらかじめ協議会で議論を行って、国等が啓開を支援する路線や区間を事前に設定をして、関係者間で合意をしておくことでこの第二十四条に基づく承認を不要とする、そうした調整等の負担軽減を図るという趣旨でございます。
しかし、事前に取り決めた合意に基づき、承認は不要とするんですけれども、本来道路管理者に代わって啓開をする場合は、改めて本来道路管理者への連絡は行うものであろうというふうに認識はしております。
堀川委員 権限は都道府県等に残したまま事実行為のみを国が代行するということになると思いますが、この国の道路啓開の代行中に事故などが起きた場合、その責任は誰が取るのでしょうか。
中野国務大臣 道路啓開計画に基づきまして、都道府県等の管理する道路について国が啓開作業を行う場合は、事実行為として国が自らの判断で実施をすることになりますので、啓開作業の実施に係る責任についても、実際に作業を行った国が負うということになります。
堀川委員 ありがとうございます。法案によって創設される道路啓開の国による代行制度は、瓦れきなどで通行できなくなった道路を一刻も早く通行可能にしようというものです。緊急性、即応性が求められることは、能登の震災も受けて、本当に重要だというふうに認識をしています。ただ、やはりその場合でも、本来の道路管理者の意思を確認するということを改めて求めたいというふうに思います。
次に、地域インフラ群再生戦略マネジメント、いわゆる群マネについて、先ほど来からも、前回の委員会からも議論がなされていますけれども、この群マネについて質問をしたいというふうに思います。
この群マネは、先ほどからもありますとおり、広域、複数、多分野のインフラを群として捉えてマネジメントしていくというものです。これによって、技術系職員が一人もいない自治体でも、県や近隣の市などと連携し、技術的な知見を補完できるということなんですけれども、ただ、実際は幾つもの壁があるというふうに思うんですね。
県や近隣の市も多くの老朽インフラを抱えていて、他の市町村のインフラの面倒を見るという余裕がなかなかないのではないかなというふうに思います。県や近隣の市の技術系職員が、技術系職員が一人もいない市町村のインフラを見ることによって、この一人当たりの仕事量というのがどれほど増えるのか、国交省は検討しておられるでしょうか。
塩見政府参考人 お答え申し上げます。 群マネでございますけれども、これは複数の市町村とか部局が個別に行っている様々な事務を一括でマネジメントしようとするものでありますが、一括化することによりまして、確かに管理とか修繕の対象となりますインフラは広がるということになります。
一方で、一くくりにすることでスケールメリットが発揮しやすくなるということもあります。受注した企業側の工夫が発揮しやすくなりまして、その工夫次第で業務量が減る、負担が減るということも期待されるところでございます。
具体的に何時間減るというような、その定量的な把握までは現時点では至っておりませんけれども、今まさにモデル的な地域を定めて試行を行っているところでございますので、その中で必要な確認などを行ってまいりたいと思います。
発注関係事務につきましても、個別で行っているものを共同化することによりまして、一つの自治体にとりましては、一年交代で持ち回りで事務を行っていくというような形を取りますと、業務量は、数年間に一度で済むということで軽減が見込まれるところでございます。そして、こうやって軽減された時間を使って、より高い技術力が必要となりますような設計とか事業計画の方に仕事を注力して行うということも可能になるのではないかなと期待をしております。
こういったように、群マネにつきましては、技術系職員の仕事の量に変化をもたらす可能性がありますけれども、今行っております試行を通じまして、必要な検討を行ってまいりたいと思います。
堀川委員 他の市町村のインフラの面倒まで見るということになれば、自分のインフラのメンテナンスも今まで以上に不十分になる可能性がある、そういう懸念はないのでしょうか。
塩見政府参考人 お答え申し上げます。今申し上げたように、業務量は増える部分もあれば減る部分もあるのかなと思っておりまして、直ちに仕事の量が増えるから、結果的に従前のメンテナンスが不十分になるということばかりでもないかなというふうに思っております。むしろ、工夫を引き出しやすくなるようなメリットもあり得るということで、その場合にはメンテナンスの質が向上できる、そういうことも期待できると思います。
こうした私どもが今考えております群マネの趣旨が自治体に徹底をされますように、令和七年度内に手引を作成しようとしておりますので、その中で、インフラの管理者が果たすべき責任などを分かりやすく示すようにしたいというふうに考えております。
堀川委員 是非、現場の声を聞いていただきたいというふうに思うんです。 今回、先ほどおっしゃったモデル地域として選ばれている幾つかの自治体からお話を伺いました。首長さんの中には、この群マネに対して意欲的な方もいらっしゃいます。でも、一方で、自分の町の道もがたがたのままなのに、ほかの町の道路のメンテナンスをやっている場合なのかというふうな声もお聞きをしました。
群マネは、差し迫ったインフラメンテナンスへの苦肉の策の一つだというふうに思いますが、やはり、自治体の技術系職員を確保することによってインフラメンテナンスを自前でやっていく、この方針ということを投げ出してはいけないと思いますが、大臣の認識をお伺いしたいと思います。
中野国務大臣 生産年齢人口というのは今後も減少が続きますので、人手不足、どの産業でも厳しさを増すと思っております。人材確保は当然そうなんですけれども、様々な対策を総合的に講じていく必要があろうかと思います。
例えば、ロボットなどの新技術で省力化をするということも必要でありますし、民間の委託の活用ということもあろうかと思います。また、先ほど来御指摘の群マネによって、地域全体として老朽化対策への対応力を確保するということも必要かと思います。
他方で、建設分野の技術職員を増やすというのは努力していかないといけないというのは思っておりまして、まず、やはり若い方々に建設分野を選んでいただくという必要がございますので、今、出前講座ですとか、あるいは、インフラメンテナンス国民会議というのを産官学民で構成をしております。こうしたメンテナンスの重要性も広く啓発をしてまいりますし、インフラメンテナンス市区町村長会議を構成をする市区町村長に対しましても、直接、技術職員の確保も働きかけてまいりたいというふうに思います。加えて、建設分野の技術資格……
井上委員長 申合せの時間が経過しておりますので、答弁は簡潔にお願いします。
中野国務大臣 はい、分かりました。こうした資格を若いうちに取得しやすくするですとか、建設技能者の処遇、職場環境の改善等々含めて、様々な対策を総合的に進めてまいりたいと思います。
堀川委員 群マネは、これを推進することによって何でも広域化していくような流れにしてはならないというふうに思いますし、自治体の技術系職員を増やす対策を求めて、質問を終わりたいと思います。