国会質問


日本共産党の堀川あきこ議員は18日の衆院国土交通委員会で初質問に立ち、北陸新幹線延伸計画(敦賀―新大阪間)の中止と「大深度地下使用法」の廃止を求めました。
堀川氏は同計画が、京都府内を地下トンネルで通す計画になっており、地下水を利用する酒造関係者をはじめ、知事、市長からも不安や懸念の声が上がっていると告発。与党がルートの年内の選定の方針をとっていることに、「懸念が払拭されなくてもルート選定を進めるのか」とただしました。中野洋昌国土交通相は「議論を見守る」と、ひとごとのような態度に終始しました。
堀川氏は、大深度法で使用認可を得て行われた東京外環道工事でボーリング調査は100~200メートル間隔での実施が推奨されているにもかかわらず、200メートル以上の範囲があることを指摘し、その数を質問。国交省の山本巧道路局長は、86本のボーリング調査の内、21カ所が200メートル以上の間隔で行われたと答え、その原因として地上家屋など「周辺の住環境への影響」への考慮を挙げました。
堀川氏は、東京外環道工事での陥没・空洞事故の原因を調査した有識者委員会委員長の、大深度地下工事では地上家屋があるから適切な場所でボーリングできないとの指摘を挙げ、同法の「解決しがたい矛盾だ」と主張。同法の廃止と北陸新幹線延伸計画の中止を要求しました。
(しんぶん赤旗2024年12月19日付掲載)より抜粋
議事録
堀川委員 日本共産党の堀川あきこです。初質問となります。どうぞよろしくお願いします。 まず最初に、北陸新幹線敦賀―新大阪の延伸計画についてお尋ねをしたいと思います。
京都を縦断する案ということで、京都からたくさんの不安の声が上がっています。豊富な地下水を使って、和菓子や日本酒、豆腐、銭湯など、これまで京都の文化や住民生活を支えてこられた方々から、地下水に何かあったら死活問題だと声が上がっております。
先日の報道でも、京都仏教会から、ルートの再考を求めるという要請が近く府知事に行われるということが報じられています。
この延伸計画について、十二月十三日、与党プロジェクトチームによる沿線自治体からのヒアリングにおいて、京都府知事、京都市長から、地下水や自然環境への影響、残土処理の課題、財政負担などなど、様々な懸念が出されております。また、ルート上にある南丹市の市長からも、要望書という形で懸念が示されています。
北陸新幹線の延伸計画に関して、このような懸念、不安が出されていることを大臣は認識しておられますでしょうか。お願いします。
中野国務大臣 堀川委員にお答え申し上げます。北陸新幹線につきまして、与党の整備委員会が開催をされまして、四日に福井県及びJR西日本から、十三日に京都府、京都市及び大阪府からヒアリングが行われております。そうした場面を含めまして、様々な御意見や、委員御指摘の御意見、御要望が寄せられていることは承知をしております。
いずれにしましても、国土交通省としては、与党における、駅位置、ルートの絞り込みに向けた御議論を見守りつつ、沿線自治体の皆様の御理解を得られるように、鉄道・運輸機構とともに、丁寧かつ着実に取り組んでまいりたいと思います。
堀川委員 不安の声は認識しておられるということでした。今ありましたように、三つのルート案が国交省からも示されて、与党プロジェクトチームは、年内にもルートを絞り込むということで動いておられるようです。
大臣は、これだけの懸念が出され、あるいは払拭されていなくても、ルートの選定を進めるべきというお考えでしょうか。お願いします。
中野国務大臣 済みません、先ほども少し申し上げて、繰り返しになるかもしれませんけれども、今、与党の整備委員会におきまして、駅の位置、ルートの絞り込みに向けた議論が行われているところでございます。国土交通省としては、まずは、こうした御議論を見守りたいというふうに考えております。
いずれにしましても、沿線自治体の皆様の御理解を得ながら、鉄道・運輸機構とともに、丁寧かつ着実に取組を進めてまいりたいというふうに思っております。
堀川委員 これは国の事業ですよね。与党プロジェクトチームの議論を見守るというふうなことですけれども、大臣としてのお考えをお聞きしたかったところです。
地元の方の不安をいまだに払拭できていない、沿線自治体との合意ができているとはとても言えない、予算は当初よりも膨れ上がり、整備新幹線の着工要件を満たしているとは言えない状況です。 日本共産党は、そもそも、延伸計画自体を中止をし、在来線こそ充実をすべきという立場ですが、地元の方がこれだけ声を上げている、府知事、市長までも懸念を示している中で、強引に進めるやり方はやめるべきだということを申し上げておきたいと思います。
続いて、この北陸新幹線の延伸工事で想定されている大深度地下工事についてお尋ねをしていきたいと思います。
大深度地下使用法により、地下四十メートル以深については、地権者が通常利用しない空間として、その土地を所有する方の同意を必要とせずに事業者にその空間の使用権を認め、トンネル工事などが実施できるというふうな内容です。 大深度地下工事を進める上で不可欠なのは、事前の地盤調査が適切に、正確に行われることです。大深度地下使用法で使用認可を得て行われたシールド工事で、二〇二〇年十月に、東京外環工事において陥没、空洞事故が発生をしました。
資料一を御覧いただきたいと思います。事故後の有識者委員会の報告です。そこでは、「特殊な地盤条件下においてカッターが回転不能になる事象(閉塞)を解除するために行った特別な作業に起因するシールドトンネルの施工が陥没・空洞事象の要因と推定される。」というふうにあります。ただ、事故後の調査でも、事前の地盤調査は適切だったと、事前のレクでも報告をいただきました。では、何が原因でこの事故が起きてしまったのでしょうか。説明をお願いします。
山本政府参考人 お答えを申し上げます。今回の事故につきましては、振動のお問合せを踏まえまして、夜間休止時間を拡大する中におきまして、特殊な地盤の下で掘進を進める際に、夜間休止中に、シールド先端部の掘削土を充満させる空間におきまして、土砂が分離、沈降し、締め固まることで掘進再開時にカッターが回転しない状態が発生をいたしました。そうしたこと、さらに、そのカッターを再回転させるために特別な作業を行ったこと、こうしたことが要因と有識者委員会で推定をされております。施工に課題があったというふうに考えております。
こうした複数の要因が重なった上での事象であったことから、あらかじめ予見をすることが困難であったというふうに考えてございます。
堀川委員 振動の問合せが増えていたというふうなことで、シールドマシンの停止時間を拡大した、それも一つの要因だというふうなことをおっしゃられましたけれども、住民の方々は、事前に地上の影響はないというふうに説明を受けて、突然平穏な暮らしが侵害をされたということで、被害者の方々だと思うんですね。住民の方に事故原因があるかのような答弁は控えていただきたいというふうに思います。
続いて、次の質問は時間の関係でちょっとスキップをさせていただいて、事前調査の地盤調査についてお伺いをしていきたいというふうに思います。
この工事では、事前調査としてボーリング調査等の地盤調査が行われています。
資料の三、四、五を御覧ください。ボーリング調査の場所を示した図を、三枚に分けてお示しをしています。赤ポツが、ちょっと小さいですけれども、ボーリングの実施箇所ということです。
続いて、資料六を御覧ください。ボーリング調査というのは、百メートルから二百メートルの間隔での実施が推奨されているということですが、外環工事の場合、全長十六キロの事業区域にボーリングは八十六か所打たれたということです。有識者委員会の報告では、調査間隔が二百メートル以上となる範囲があるというふうに記載があるわけですが、この外環工事のボーリング調査で、二百メートル以上の間隔で実施されている箇所は何か所でしょうか。
山本政府参考人 お答え申し上げます。ボーリング調査を実施した八十六か所のボーリング同士の間隔、平均間隔は百六十七メートルでございますけれども、ボーリング調査に伴います騒音、振動によって周辺の住環境への影響などを考慮いたしました結果、調査間隔が二百メーター以上となっている区間は全部で二十一区間となってございます。
なお、こうしたボーリングの調査間隔が二百メーター以上の区間については、ボーリング調査地点間に地盤急変部が存在しないことなどを確認するために微動アレイ探査を実施いたしまして、支持基盤の連続性を確認をしております。
堀川委員 ありがとうございます。八十六本のボーリングで、調査間隔二百メートル以上のボーリングが二十一か所という答弁でした。この数は尋常ではないというふうに思います。
先ほど答弁の中で、周辺の住環境の関係でボーリング調査ができないというふうなことをおっしゃいました。この有識者委員会の報告書の中にも、周辺環境条件によりボーリングが実施をできず、調査間隔が二百メートル以上となる範囲があるというふうなことで、微動アレイ探査の調査をやっているというふうにあります。
もう一つお伺いしたいんですけれども、周辺環境条件ということについて具体的にお伺いしたいんですが、有識者委員会の小泉淳委員長は、二〇二〇年十二月十八日のブリーフィングで、今までのシールドは大体道路下を掘ってきた、今度は民地下も掘らなければいけない、そうするとジャストポイントでボーリングができないと述べておられます。
つまり、住宅街など地上に何か建物などが既にあって、その地下を掘り進めるという工事は、地盤調査をやるにも、ここでやるべしというポイントにボーリングを打つことができないということをおっしゃっていると思うんですけれども、この周辺環境条件というのはそういうことで認識してよろしいでしょうか。
山本政府参考人 お答え申し上げます。周辺環境の条件によりボーリングが実施できないという条件でございますが、ボーリングの調査の実施に当たりましては、調査機器を安全に設置するために一定の面積が必要となります。また、その設置に要する期間も数か月要する。また、作業に伴いまして騒音、振動が発生する可能性があるということを考慮する必要がございます。
こうした点を踏まえまして、周辺の住環境への影響などを考慮することが必要となりますことから、公園などの公有地を基本といたしまして実施箇所を選定をしたという次第でございます。
堀川委員 ありがとうございます。つまり、ジャストポイントにボーリングを打つことができない、地盤調査には限界があるということが否定できないというふうに思います。 資料七としてお示ししているものを御覧ください。
日本トンネル技術協会のシールド工事格言集の中にある格言です。「ボーリング地点もシールド路線上のジャストポイントでない場合が多く、ボーリングした時期(季節、年代)や方法によって差異のある土質データが得られる場合もあり、必ずしも実態と合致しているものではないことを十分に認識しておく必要がある。」というふうにあります。小泉委員長がおっしゃっていることと同様、それ以上の指摘です。技術者側からもこうした指摘があるということを申し上げておきたいというふうに思います。
もう一つお聞きしたいんですけれども、外環工事で採用されました直径十六メートルのシールドマシンを使用した泥土圧シールド、こうした大口径の、直径の大きなシールドマシンでの泥土圧式工法というのは、これまで実績はあるのでしょうか。鉄道や地下河川では実績がないということを確認しておりますが、道路ではいかがでしょうか。
山本政府参考人 お答え申し上げます。道路事業におきまして、東京外環道路を除きまして、直径十六メーターを超える泥土圧シールド工法で掘削を完了又は現在掘削を実施しているトンネルはございません。
堀川委員 実績はないということでした。リニア新幹線も同様ですが、実績もない大口径のシールド工事を進めるからには、より詳細な地盤調査が必要だと思います。
しかし、大深度地下は、地上に家屋などがあって、ジャストポイントでボーリングはできない、ここに大深度地下法の解決し難い矛盾があるというふうに思います。大臣、このような大深度地下使用法に基づくシールド工事をまだ継続するべきだとお考えでしょうか。
中野国務大臣 大深度地下使用法による使用認可というのは、国民の権利保護に配慮をしつつ、公益性を有する事業のために、地権者により通常使用されない空間である大深度地下を使用する権利を認めるというものでございます。
委員御指摘の東京外郭環状道路の大深度地下空間につきまして、平成二十六年の三月二十六日付で使用認可を行ったところでございますが、御指摘の陥没事故は、あくまで工事の施工に起因をするものであると考えておりまして、事業者の責任において適切な対応を行うべきものと考えております。したがいまして、現在、大深度地下法に基づく使用認可の取消しなどの必要はないというふうに考えております。
堀川委員 事業者に任せているということですが、国交省、認可をしているというふうなところで責任はあるというふうに思います。
日本共産党は、大深度地下法の廃止法案を参議院へと提出をしました。地上への影響はないという前提がこの東京の外環事故で破綻した今、やはり廃止すべきだと改めて申し上げたいというふうに思います。
そして、この大深度地下工事で計画をされようとしている北陸新幹線の延伸計画について、地下水や自然環境に関しては、何かあってからでは遅いんですね。これについても、きっぱり中止すべきということを申し上げ、私の質問を終わらせていただきます。