国会質問


船員法改正案が17日の衆院本会議で自民党、立憲民主党、日本共産党などの賛成多数で可決されました。日本共産党の堀川あきこ議員は16日の衆院国土交通委員会で、船員の求人票と船内の食事の改善を求めました。
堀川氏は、改正案で地方自治体が無料で船員職業紹介ができるようにするのは必要な措置だとしつつ、求人票の賃金欄に「月額手取賃金」と表示するのは「どんぶり勘定だ」との元船員の声を示し、「陸上の職業と同様に基本給、各種手当をそれぞれ表示すべきではないか」とただしました。
中野洋昌国交相は「記載内容の見直しを検討する」と答弁しました。
また堀川氏は「長期間船上生活を送る船員にとって、食事は大きな楽しみで、バランスの取れた食事の提供は船内環境、労働環境改善の重要な柱の一つだ」と強調。食事の提供が専門の司厨員が乗船していない内航船では、通常の運航業務を担う船員が買い出しを含む食事の準備を行っているとして、船員の負担軽減のために同省が策定したガイドラインに基づく取り組みによって「食事が改善されたのか」と質問しました。
国交省の宮武宜史海事局長は「把握できていない」と答弁し、中野国交相は「実態調査の必要性を含め検討したい」と答えました。
堀川氏は、ガイドラインでは抜本的な改善は困難だと指摘。司厨員は船上になくてはならない存在として位置付け、人件費などの原資となる運賃の引き上げに向け、トラック運送で取り組んでいる標準的な運賃と同様の制度を海運にも導入するよう求めました。
(しんぶん赤旗2025年4月22日付掲載)より抜粋
資料
議事録
堀川委員 日本共産党の堀川あきこです。船員法改正案のうちの、船員募集、海上労働環境の改善に関わって質問をしたいと思います。
今回の改正案で、地方自治体による無料の船員職業紹介事業、これが創設されるということは、必要な措置だというふうに考えています。一方、求人票にどういう情報が表示されているかというのは、労働者、求職者にとっては仕事を選ぶ上で大変重要な情報だというふうに認識をしています。中でも賃金に関する情報というのは極めて重要だと思うんですね。
そこで、資料一を御覧いただきたいと思います。これが船員の職業紹介の求人票ということなんですけれども、一番下が賃金欄になっております。そこに月額手取賃金と表示をされています。陸上の職業では、基本給と各種手当がそれぞれ分けて明記されているというのが一般的です。この月額手取賃金とは何なのか、なぜ船員の賃金はこうした表記になっているのか、お答えください。
宮武政府参考人 お答え申し上げます。御指摘いただきましたように、船員の求人票におきましては、賃金の記載方法を月額手取賃金としております。これは、総額の総支給額という表示じゃなくて、実際に船員が受け取ることができる金額を明確にするという観点から、手取り賃金という形で表示させていただいているところでございます。
堀川委員 ある船員のOBの方から、船員の賃金というのは丼勘定になっていて、自分が受け取っている賃金の内訳が分からない仕組みになっている、こういうふうなお話もお聞きをしました。
備考欄のところに基本給や手当等の詳細を記載することもできるというふうなことになっていると思うんですけれども、それはあくまで必須事項でなくて補足事項なんですよね。
求人者の善意に任せるのではなくて、月額手取賃金という表示に不安を抱く求職者が出ないように、基本給や各種手当をそれぞれ表示するようにすべきではないかというふうに思うんですが、大臣、いかがでしょうか。
中野国務大臣 お答えを申し上げます。船員の求人票における月額手取賃金の欄には、先ほど局長から答弁させていただきました手取りの月額賃金額を記載をするということとしております。月額の手取り賃金は、基本給のほか、乗船手当、航海日当等、各種手当が含まれた賃金額として示すこととしております。
一方、必須事項ではございませんが、企業の判断により、基本給、手当等の詳細など、給与の詳細も含め、企業のPRするポイントを求人票の備考欄に補足して記載ができるようにもしております。
現在、船員の求人票につきましては、船員の労働条件や給与体系等を踏まえた求職者目線で分かりやすい内容となるように、手取りの月額賃金額に加えて総支給額の記載欄も設けるなど、その記載内容の見直しを進めているところでございます。引き続き適切に対応してまいりたい、このように考えております。
堀川委員 総支給額だけではなくて、今大臣がおっしゃったように、この月額手取賃金の中に乗船手当や航海日当も含まれる、それ以外に家族手当や勤続手当や職務手当なんかも含まれていくというふうに思うんですけれども、やはり給与や手当の表示をざっくりではなくて詳細に記載するということは、求職者が求めている重要な情報だというふうに思うんですね。そうした記載が陸上の職業では一般的なんですよね。
船員不足を解消するために、これは必要な措置だと思いますし、積極的な提案をさせていただいているというふうに思うんですけれども、是非検討するぐらいはしていただきたいんですけれども、大臣、もう一度答弁をお願いします。
中野国務大臣 どの程度、給与の詳細を記載をすべきかという点もこれは含めまして、記載内容の見直しを検討してまいりたいと考えております。
堀川委員 船員不足の解消に努めるというふうなことであれば、このことについてもしっかり検討を行っていただきたいということを再度求めておきたいというふうに思います。
次に、内航船の船内供食、船員の食事環境のことについてお伺いをしていきたいというふうに思います。
今回の法案は、船舶所有者に快適な海上労働環境の形成のための措置を講ずる努力義務を課すというふうなことで、様々な措置、通信環境の整備であったり、個室のシャワーを作るであったり、そういうことが挙げられております。数週間、数か月間、長期間船上生活を過ごす船員にとって、食事というのは大きな楽しみの一つでもあるというふうに思いますし、おいしくて栄養やカロリーバランスの取れた食事が提供されるようにするということは、船内環境や労働環境改善の重要な柱の一つだというふうに思っています。
この船内供食の改善の必要性、そして、その中で船員への食事の提供を専門で行っているというのが司厨員、コックさんですね、この司厨員の果たす役割について、大臣はどういうふうに認識されているでしょうか。
中野国務大臣 職住が一体でありまして、陸上から隔離された船内生活を送る中では、船内での食生活というのが不可欠であります。また、船員が健康であることは、安全に船内等の作業を行う大前提でもございます。さらに、健康に配慮したおいしい食事が船内で提供されるということは、船員にとって大きな魅力でもあると考えております。
このように、司厨員が行う調理を含め、船内においておいしく充実した食事が提供されるということは、健康で安全な船員労働の実現と船員の職業としての魅力の向上を図る上で重要なことであるというふうに認識をしております。
堀川委員 ありがとうございます。司厨員が今乗っていない船では、乗組員が買い出しから調理まで、時間を割いて担っているというふうな実態があるかと思います。その中で、買い出しに八十分かかったりとか、全員分の食事を作るのに八十分かかったりとか、そういう実態があるということは国交省の調査でも分かっていることだというふうに思います。この司厨員が乗船しているのとしていないのとでは、やはり船員の食事環境であったりとか、あるいは労働環境というのは大きな差が出てくるというふうに思うんですね。
国交省が令和三年にガイドラインを策定をされて、それに基づく取組をこの間されてきているというふうにレクでも説明をいただきました。このガイドラインができて既に三年以上経過をしているわけなんですけれども、このガイドラインに基づく取組で船員の食事が改善されてきているのか、調理時間が短縮されたり、あるいは食事の内容が改善されているのか、その効果についてお答えください。
宮武政府参考人 御指摘ありましたガイドラインは、船舶所有者などに推奨される取組として、船内の設備等の改善充実、寄港地の設備等の改善充実、宅配サービスなどの活用などを具体的に示しているものでございます。 ただ、このガイドラインに基づく取組の効果につきましては、現時点におきまして把握できておりません。
堀川委員 ガイドラインを作ったんだけれども、その効果が把握できていないというふうなお答えでした。
取組の実態を把握していないのであれば、これからでも実態を把握するようにすべきではないかというふうに考えますが、大臣、いかがでしょうか。
中野国務大臣 御指摘の船内供食改善ガイドラインは、健康に配慮したおいしい食事の提供の実現、そして船員の供食作業の負担の軽減の観点から、船舶所有者が取り組むことができる具体的な取組を示したものでございます。
このガイドライン、令和三年の十二月に作成をされたものですが、多くの船舶の所有者に取り組んでいただくために、まずは内容の周知をしっかり図っていくということが重要であるというふうに考えております。
この周知を十分に図った上で、今後、現場で働く船員の声を伺いながら、実態調査の必要性も含めまして、引き続きどのような船内供食が望ましいのかについては検討してまいりたいというふうに考えております。
堀川委員 是非、船員の労働環境、その中での食事の要素というのは大きな要素だというふうに思いますので、実態調査も含めて検討をお願いをしたいというふうに思います。
続いての質問です。司厨員ではない船員が、通常の運航業務に従事をしながら、乗組員の健康や好みだったり栄養バランスを考慮しながら、日々の献立を考えて食材の調達から管理から、おいしい料理を作り続けるということは極めて困難だというふうに思います。ガイドラインの中でも、そのことについて容易ではないというふうに書かれているわけです。
その上で、ガイドラインには推奨される取組の事例というのが書かれてあるんですけれども、これらの取組では、船内供食は抜本的に改善されないというふうに思うんですね。それよりも、やはり司厨員を、船舶を運航させる上でなくてはならない船員として位置づけてはどうかというふうに思うんです。
これまで議論してきたように、司厨員というのは、乗組員の健康や生活の満足度や定着率向上を左右する重要な存在だというふうに思っております。大臣からもそういうふうな答弁がありました。現時点で、千トン以上の船については司厨員の配置義務があるというふうなことなんですけれども、今すぐにとはなかなかいかないかもしれませんけれども、この司厨員の位置づけについて、改めて検討してはいかがでしょうか。
中野国務大臣 お答えを申し上げます。もちろん、船員の健康の管理や調理負担の改善のためには、専任の司厨員を乗船をさせるということも有効な方策ではございますが、一方で、アンケートの調査によれば、コストの問題ですとか、あるいは物理的なスペースの問題により、専任の司厨員を雇用することが厳しい船舶があるという現状についても把握をしているところでございます。
ですので、こうした実情を踏まえまして、令和元年の七月に、船舶料理士資格の効率的な取得に関する検討会におきまして、司厨員がいない船舶においても健康に配慮したおいしい食事が取れるようにということで、船員の負担軽減に資するガイドラインを作成することが適当であるという方向性が取りまとめられたところでございます。これを受けて、先ほど、議論させていただいている、令和三年十二月の船内供食改善ガイドラインを作成をさせていただいたところであります。
国土交通省として、ガイドラインの活用に向けまして周知を進めることで、船内調理業務の負担の軽減を図りつつ、健康に配慮したおいしい食事の実現を図ってまいりたい、このように考えております。
堀川委員 司厨員を配乗しようにも、財政的な負担が壁になっているというふうな指摘、認識をしております。貨物の船舶の場合、やはり荷主が払う運賃が船員の賃金や司厨員の配乗に大きく影響をしています。
陸上の貨物運送を担うトラックでは、多重下請構造の下で、末端のトラックドライバーが生活できる賃金が受け取れるようにということで、国交省が標準的な運賃を示しています。内航船についても、同様の仕組みの導入に向けて検討を始めてはいかがでしょうかと思いますが、大臣、お願いします。
中野国務大臣 内航船員の労働環境の改善を円滑に進めていく上では、荷主や内航海運業者の間において、その原資の確保に必要となる適切な運賃や用船料の収受がなされることが不可欠でございます。
国土交通省では、令和三年に内航海運業法を改正をしまして、契約書面交付の義務づけなどを措置をするとともに、内航海運業者と荷主が遵守すべき事項等を、内航海運業者と荷主との連携強化のためのガイドラインとしてまとめ、周知を進めているところでございます。
また、令和七年度におきましては、適正な運賃及び用船料の収受に当たって必要となる、運賃や用船料を構成する費目に係る標準的な考え方の策定を行う予定でございます。
国土交通省としましては、これらの取組を通じて、内航海運業者の適正な運賃、用船料の収受を後押しをしてまいりたいと考えております。
堀川委員 適正な運賃なしには、やはり船員の労働環境の改善というのは図れないというふうに思います。労働環境の改善のために、引き続きこの問題は取り上げていきたいということを申し上げて、質問を終わります。