国会質問

第217通常国会(2025年)

運用で障害者を排除するな― 災害対策基本法等改正めぐり指摘


 「法の運用を当事者の方々が厳しい目で見ている」―。日本共産党の堀川あきこ議員は16日の衆院東日本大震災復興・防災・災害対策特別委員会で、災害対策基本法等改正案で創設する「被災者援護協力団体」について、障害者を役員とする団体は登録できないとする要件について追及しました。

 参考人質疑では日本障害フォーラム(JDF)の大野健志氏からも問題の要件を削除するよう求め、他の障害者団体も抗議しているとして見解をただした堀川氏に対し、坂井学防災担当相は「支援活動での貢献を否定しない」「排除する考えは全くない」として、内閣府令による対応を検討すると答弁しました。

 能登半島地震での市町や県を超えた「広域避難」について、全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD)の栗田暢之代表理事は、参考人質疑で「非常に課題が多い」と述べています。堀川氏は災害派遣医療チーム(DMAT)事務局の近藤久禎次長の紙上での意見も紹介し、元の地域に帰れず、最悪、避難先で亡くなりかねない現実をふまえ、国として検証するよう求めました。

 改正案に盛り込まれた応急対策としての支援を復興の担い手である地元に引き継ぐことの重要性を指摘した堀川議員に対し、坂井担当相は「(支援団体が)コミュニケーションを取って、少しずつ担っていく主体を(地元団体に)移していくことが大事だ」と述べながら、具体的対策への言及はありませんでした。

 改正案は同日の同委で、日本共産党を含む賛成多数で可決しました。

(しんぶん赤旗2025年4月19日付掲載)より抜粋

議事録

堀川委員 日本共産党の堀川あきこです。災害対策基本法等改正案について質疑を行いたいと思います。
まず最初にお聞きしたいのが、広域避難に関することについてです。

 法案では、広域避難に当たって、被災自治体と受入れ自治体間の被災者情報の提供などが新たに盛り込まれました。広域避難に関する内閣府の見解をお聞きしたいと思っているんですけれども、今回の能登半島地震では、市町や県をまたがる広域避難が進みました。被災した場所では、寒さや栄養不足、インフラの復旧に時間がかかるというふうなことで、命を最優先するという判断の下、DMATを始めとして懸命に避難活動がなされて、助かった命もたくさんあるというふうに認識をしています。

 ただ、その一方で、広域避難についての問題提起もこの間なされております。

 発災直後から石川県庁で国立病院機構本部のDMATの事務局を務められた近藤次長が、一月二十五日付の朝日新聞の中で、広域避難、搬送はやむを得ず行う措置であるという認識を持つ必要があると感じていますというふうに発言をされております。その後に、一たび被災地の外に運ばれると、戻ってくることはなかなか難しい、慣れない土地での生活になり、家族や友人とのつながりも弱くなってしまう、被災地のコミュニティーやなりわいにもダメージを与えますというふうに続けておられます。

 能登半島地震から一年と四か月たとうとしている今、人口減少が被災自治体の大きな課題となっている中で、その一つの要因が広域避難だというふうな指摘もあります。難しい問題だとは思うんですけれども、やはり一旦立ち止まって考える必要があるというふうに思うんですね。

 様々な指摘がある中で、広域避難について、大臣の見解をお伺いしたいと思います。


坂井国務大臣 災害も様々ございますし、それぞれの地域地域、それぞれの災害で、現場の状況は違うと思います。ですから、この記事のことも御指摘されましたけれども、これだけ長いこと経験を積んだ方が、果たして何がよかったのかということで率直に悩まれている、苦しんだということをおっしゃっているんだと思います。これは大変難しい問題だと思います。

 しかし一方で、災害というのは先が読めないですよね。見通しがどうなるかという予見がなかなかできない、正確な予測ができないという中で、だけれども、その時点で判断しなければならないということでございますから、その時点で、どちらが被災者の方がより命の安全を確保できるのか、よりよい環境で避難生活が送れるのかということを想定する中で、二次避難がふさわしいということもあろうかと思いますので、ここはやはり現場現場で、二次避難が必要だということも当然出てくるだろうと思っておりますので、そのときは二次避難を選択をすべきだと思っております。


堀川委員 私は、広域避難の結果、今どういうことが起きているのかというふうなことも含めて、少なくとも検証をするべきだというふうに思うんです。
広域避難で命は助かったものの、元いた地域に帰りたいという人が、高齢者施設の復旧に時間がかかったり、その施設に職員が戻れなかったりというふうなことで、なかなか戻れないというふうな実態もありますし、最悪の場合、避難先で亡くなるというふうなケースもあります。

 広域避難、搬送を受け入れた病院関係者の方々からも、地元に帰れずに亡くなっていった方々を見て、本当にこれでよかったのかというふうな問いかけを自身になされるというふうな報道もありました。
やはり、震災前に住んでいた地域に戻りたいという願いがかなえられない現実というのが、一体何が足りないのか、能登の現状や被災者の実態も受けて、少なくとも検証をやるべきだと思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。


坂井国務大臣 様々な御意見がありますので、ワーキンググループにおきまして、能登半島地震の経験や教訓を基に、今後の災害において、ホテル、旅館等への避難をどうするかといったような議論をしていただきました。ある種の検証だったと思います。そして、それを基としてガイドラインを作成することとしております。

 また、改正法案においては、広域避難者に対する情報提供を充実させ、市町村間での情報連携を推進することを規定しており、こういったものを円滑にしていくように、より取組を進めていきたいと同時に、医療や介護が必要な方への支援状況の検証につきましては、厚生労働省でこれまた検討していると承知をいたしております。


堀川委員 少なくとも検証は国としてやるべきだということを改めて求めたいというふうに思います。
先ほど紹介をさせていただいた近藤次長は、たとえ広域避難、搬送を余儀なくされた場合でも、コミュニティーを崩さないようにするべきだ、災害後に地域の機能をいかに維持し、復興させていくのか、地域や自治体として考え、準備しておく必要があるというふうに話されています。重要な指摘だと思いますので、是非受け止めていただきたいと思います。

 続いて、昨日の参考人質疑の中で、自治体が作成する個別避難計画と災害ケースマネジメントの連動の必要性というのが、たしか、二人の参考人の方から、その必要性について意見があったというふうに思います。被災者情報の提供を個別支援につなげていくということについて、JDF、日本障害フォーラムの大野参考人から問題提起がありました。被災地に入ってから実際に自治体との連携というのはかなり時間がかかって、その時間がかかった中で、支援を必要としている障害者とつながるのにかなり苦労されたというふうなお話があったと思います。

 障害のある方を必要とされる支援につなげるためには、専門性の高い、こういった支援団体との連携というのが不可欠だというふうに思います。様々な団体や手段で入手をした被災者情報と行政の持つ情報をどうやって、救助段階だけではなくて、被災者の個別支援、生活支援に結びつけるのか、今回の改正案ではどのように検討されているでしょうか。


高橋政府参考人 お答えいたします。被災者支援に当たりましては、様々な民間団体と行政とが、それぞれ有する被災者ニーズ等の情報を共有して、連携して対応することが重要だと考えております。

 熊本地震以降の災害では、例えば、災害中間支援組織が中心となりまして、行政、NPO、ボランティア等で構成される情報共有会議を開催し、これは能登でも毎日開催をしておりましたけれども、官民連携により、被災地のニーズに応じた支援活動を展開してきているところでございます。

 この災害中間支援組織は、現在、二十三の都道府県で設置をされておりますけれども、内閣府では、この取組を更に進めるために、モデル事業等により支援をしているところでございます。

 また、今回の改正法案で新たに創設される被災者援護協力団体につきましては、一定の秘密保持義務を設けた上で、被災者の個人情報を協力団体に提供できることとしておりまして、行政の持つ情報と民間の持つ情報を結びつけて被災者支援を行っていけるようにしていきたいと考えております。


堀川委員 済みません、個別支援、生活支援に関しても、被災者の情報というのが提供されるというふうな理解でよろしいですか。うなずいていただけたらいいんですけれども。


高橋政府参考人 お答えをいたします。今申しました、協力団体への被災者の個人情報は、被災者の台帳情報を提供できるというような規定になってございまして、被災者の方々が、それぞれいろいろなニーズがございますが、そうしたニーズ情報などを提供できる、そうした規定を設けておるところでございます。


堀川委員 ありがとうございます。次の質問、済みません、時間の関係で飛ばさせていただきまして、その次の質問に移りたいと思います。

 昨日の参考人質疑で、応急支援から長期的支援へ切れ目なく続けていくことの必要性というものが語られました。応急対策と復興対策がかけ離れているというふうな意見もありました。

 私、このことを本会議でも質問させていただいたんですけれども、ちょっと意図したことが伝わっていないように思いましたので、改めてお聞きをしたいと思います。

 様々な支援団体が応急期に入って様々な活動を担っているというふうなことなんですけれども、そうした支援を復興の担い手である地元に引き継いでいく、その必要性と意義について、大臣、どういうふうに認識されているのか、そして、具体的な施策、何か検討されていることがあれば、お答えください。


坂井国務大臣 委員御指摘のように、被災地が自立し、本格的な復興を図っていく上で、将来的に地元による復興が成し遂げられるように、この支援に当たっても、応急対策期から復興期というか、に切り替えていくという意識は極めて大事だと思います。

 昨日の参考人質疑におきましても、能登半島地震において、当初から地元団体と外部支援団体とが連携した取組が紹介されたものと承知をいたしておりますが、やはり、切れ目なくというか、うまくつないでいくということは、コミュニケーションを十分に取っていくということが何より大事だと思っておりますので、官民の様々な支援施策も活用しつつ、これらの団体がうまくコミュニケーションを取って、そして少しずつ担っていく主体を移していくということ、これが大変大事だと思いますし、これを目指していきたいと思っております。


堀川委員 引き続き、この問題は議論をし続けたいというふうに思います。

 最後です。被災者協力団体の登録要件についてです。

 本会議でも質問しましたし、昨日の参考人質疑の中でも議論がありました。障害者を役員とする団体が登録できないという要件についてのことです。私のところにも、他の障害者団体から、障害者の権利条約に反するというふうな抗議の声をいただいております。改めて、昨日の参考人質疑の中でも削除を求められた方もいらっしゃいました。

 こうした声に対する大臣の受け止めを聞かせていただきたいのと、やはり、障害者自身も被災者支援活動の中で大きな役割を発揮してきたというのが昨日も紹介をされたというふうに思います。

 こうした実績やあるいは団体の自主性、自発性を生かすのが今回の改正の趣旨だというふうに思っているんですけれども、これまでなかなか行き届かなかった障害者の支援を支援団体と行政が連携して進めるようにするべきだというふうに思うんですが、併せて見解をいただきたいと思います。


坂井国務大臣 まず、今まで障害者団体がこういった支援活動において貢献された実績を否定するつもりも全くありませんし、また、そういった方々に引き続きお力をいただきたいと思っておりますし、排除するという考えは全くございません。

 今、法案が出ている状況でございますが、法律が成立をいたしますと、内閣府令を出すということで、その中で、今日も何度か申し上げましたが、必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者に該当しなければ要件に当たらない旨を明らかにするつもりでおりますけれども、つまり、そこまでが今、表にまだ出ていないということから、十二分にまだ我々の意図がお伝えできていないんじゃないかなとは思っております。

 ですから、この法案をお認めいただければ、その後に内閣府令について検討していくわけでありますが、今御指摘の点も十分踏まえて、その点、検討を進めていきたいと思っております。


堀川委員 法の運用がどうなっていくのか、当事者の方々が本当に厳しい目で見ておられますので、しっかり受け止めていただきたいというふうに思います。質問を終わります。