国会質問

第217通常国会(2025年)

トラックドライバーの過労死なくせ、荷待ち中も労働時間


 日本共産党の堀川あきこ議員は9日の衆院国土交通委員会で、トラックドライバーの過労死をなくし、働く人の尊厳と人間らしい働き方を実現するために政府の対策の強化を求めました。

 堀川氏は、いわゆる「物流の2024年問題」への政府の一連の対策にもかかわらず、トラックドライバーの過労死が2023年度も全産業中でトップで、15年連続で1位だったと指摘。過労死が減らないのは拘束時間の長さに加え、本来は労働時間の荷待ち時間を休憩時間とみなす不当な労働管理があるからだと告発しました。

 堀川氏は、荷積みや荷降ろし前の待機時間は休憩時間ではないはずだとただすと、厚生労働省の尾田進審議官は「労働時間にあたる」と認めました。

 堀川氏は、建交労から入手した北海道のドライバーのデジタルタコグラフ(運行記録)による運転日報には、荷降ろしなどの時間が「休憩」と記録されている実態を示し「この事業者は、10分停車すると自動的に休憩時間になるようデジタコを設定しており、このドライバーは、こうした不当な労働管理の下で過労死している」と告発。「これは一例で、過労死を本気でなくそうとするなら、実態を調査すべきだ」と迫りました。

 中野洋昌国交相は「監査を行っている」との答弁に終始。堀川氏は「一般的な対応ではなくならない」と批判しました。

 さらに堀川氏は、こうした不当な労働管理を労働基準監督署も見過ごしていると指摘し、改善を要求。鰐淵洋子厚労副大臣は「厳正に対処する」と答弁。堀川氏は「一般的な対応では見抜けない」と批判しました。

(しんぶん赤旗2025年4月11日付掲載)より抜粋

資料

議事録

堀川委員 日本共産党の堀川あきこです。今日はトラック運転手の働き方について質問をしたいと思います。

 政府は、いわゆる物流の二〇二四年問題への対応として、二〇二三年、物流革新政策パッケージ、物流革新緊急パッケージ、そして昨年の通常国会での物流効率化法などの改正、昨年四月一日に施行されました改正改善基準告示、そして標準的な運賃の平均八%の引上げ等に取り組んできたということです。これらの取組は、元々トラックドライバーの過労死をなくすというところに最大の目的があるというふうに認識をしています。

 ところが、トラックドライバーの過労死は、二〇二三年度も全産業の中でトップであるということなんです。資料の一にお示しをしているんですけれども、赤枠で囲った部分です。道路貨物運送業は、左の表で脳・心臓疾患の労災の請求件数が百七十一件となっておりまして、そして右の表では支給決定件数が六十六件と、いずれもトップで、これは十五年間連続で一位というふうなことになっているわけです。

 トラック運転手の働き方は果たして改善されているのか、大臣の認識を最初に伺いたいというふうに思います。取り組んでこられたことはもう重々承知しておりますので、働き方が変わっているのかどうか、認識を聞かせてください。


中野国務大臣 お答え申し上げます。働き方ということで、賃金、処遇等、働き方が改善されているのかどうかということでお答え申し上げます。

 トラック運送業、委員もよく御承知のとおり、他の産業と比較して賃金が低い等、労働条件の改善というのは大変課題であります。その賃金の引上げの原資となる適正運賃を運送事業者が収受できる環境整備が重要でございます。

 委員も御指摘の様々な取組を行ってきたところでございますが、トラックドライバーの賃金については、令和五年度の現金給与総額は前年度から横ばいでございます。現在、政府全体で賃上げ支援を強力に推進をするとともに、構造的な価格転嫁の実現に鋭意取り組んでおります。昨日、私からも直接、トラック業界に対して価格転嫁や賃上げについて要請を行ったところでございます。

 労働時間ということも申し上げますと、令和五年度から令和六年度にかけて、トラックドライバーの労働時間は約二%減少をしておりますが、残念ながら、荷待ちの時間や荷役の時間の合計は、四年前と比較してほぼ横ばいというのが現状でございます。

 この労働環境の改善には、荷主の理解と協力が不可欠だと考えております。引き続き、国土交通省として、標準的運賃の周知啓発や、トラック・物流Gメンによる荷主等への是正指導等に取り組むとともに、改正物流法は今月から施行となりましたので、これを活用して、荷主等による荷待ち時間の削減の取組等の運用をしっかり進めてまいりたいと考えております。


堀川委員 トラックドライバーの過労死が減らないのは、その拘束時間の長さがまずあると思うんですけれども、その中でも、労働時間を休憩時間とみなすような不当な労働管理の実態もあるからだというふうに認識をしています。

 最初に確認をしておきたいんですけれども、トラックドライバーが荷積みや荷降ろし前などに待機している時間、いわゆる荷待ち時間なんですけれども、このときドライバーは声がいつかかってもいいようにトラックに乗車したまま待機をしている状態です。労基法によりますと、休憩時間の定義は、労働者が休息のために労働から完全に解放されていることを保障されている時間というふうにありますので、当然この待機時間は休憩時間ではないというふうに考えますが、厚労省、いかがでしょうか。


尾田政府参考人 お答えいたします。労働基準法における労働時間とは、使用者の指揮命令下に置かれている時間であり、使用者の明示又は黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は労働時間に当たります。一方、休憩時間とは、委員が御説明いただいたとおり、単に作業に従事しない手待ち時間は含まず、労働者が権利として労働から離れることを保障されている時間のことをいいます。

 トラック運転者が荷物の積卸しのために待機している時間は、指示があった場合には即時に業務に従事することを求められており、労働から離れることが保障されない状態にあることから、通常はいわゆる手待ち時間として労働時間に当たるものと考えられます。そのため、一般的には、荷物の積卸しのための待機時間を休憩時間とみなすことはできないものと考えられます。


堀川委員 ありがとうございます。ただ、ところが、実際にはこの荷待ち時間を休憩時間としてカウントをしている実態があるんですね。

 ちょっと済みません、質問の順番を変えさせていただいて、先に、トラックの運行記録に使用されているデジタルタコグラフ、通称デジタコについてお聞きをしたいと思います。

 資料の二を御覧いただきたいんですけれども、これはあるトラック事業者が記録をした従業員ドライバーの運転日報です。表の左の方、左端から二列目のところ、作業欄、少し見にくいんですけれども、そこを見ると、出庫、荷積み、入庫が一回ずつあって、それ以外の部分は赤線を引いているんですが、全て休憩になっているんですね。ただ、実際には、このドライバーさんはホタテの運搬のために網走の漁港に行って、そこで十分な漁獲量がなかったから荷待ちの時間が発生をしているんです。

 そのホタテを積んで、今度は紋別まで運んで、そこで荷降ろしの時間もある。そして、これも休憩にされているわけなんですね。トラックの労働組合の方からお話を伺いますと、この事業者のデジタコは、十分以上停車をすると自動的に休憩時間になるように設定をされているということなんです。

 このドライバーの方なんですけれども、こうした不当な労働時間の管理の下で過労死されているわけなんです。

 これは一例ですけれども、昨日、国交省の方からレクを受けたときに、こういうふうに労働時間を休憩時間にされているようなケースが、ドライバーさんから直接国交省にも相談として届いているということでした。大臣もこうした不適切な労働管理が行われているということについて認識されているというふうに思うんですけれども、ただ、これはちゃんとした実態調査をされていないんですね。

 過労死を本気でなくそうと思ったら、こうした実態、しっかり把握するべきと思いますが、大臣、いかがでしょうか。


中野国務大臣 デジタル式運行記録計、いわゆるデジタコは、運転者の運転時間、走行距離、速度といった運行に関する詳細な記録を行うことができます。運送事業者において、勤務時間の適切な把握や運転者への安全指導などに活用いただいているところでございます。

 委員の御指摘の、デジタコを悪用した違反行為について御質問がございました。国土交通省としましては、運送事業者に対しまして監査を行っております。こうした監査などを通じまして、委員御指摘のような違反行為が明らかとなった場合には、厳正に対処してまいりたいというふうに考えております。


堀川委員 これは監査ではなかなか見抜けないということも国交省はおっしゃっていました。一般的な対応ではなくならないから提案をさせていただいているんです。

 真摯に受け止めていただきたいと思います。もう一つ、労働基準監督署の対応についてもただしたいと思います。

 この運転日報のように、荷待ち時間を休憩時間にされているにもかかわらず、資料の右下を見ていただけたら分かるんですけれども、労働基準監督署の判こが押されていまして、この運転日報が受理されているんですね。あくまで一例なんですが、荷待ち時間を休憩時間にされていることを見逃していないかどうか、この労働基準監督署の点検の仕方、改善が必要ではないかと思いますが、いかがでしょうか。


鰐淵副大臣 お答え申し上げます。労働基準監督署の監督指導におきましては、デジタルタコグラフ等の客観的な資料を確認するほか、必要に応じまして事業主や労働者から聞き取りを行うなど、丁寧に拘束時間や労働時間などを確認いたしまして、法令違反が認められた場合は、その是正を指導しているところでございます。

 仮に、労働時間等の記録が適切でない場合は、その適正な把握について指導するとともに、監督指導時に、虚偽の記録や書類を提出するなどの重大、悪質な事案に対しまして送検を行うなど、厳正に対応しておるところでございます。厚生労働省としましては、こうした監督指導等を通じまして、トラック運転手の労働環境の改善に努めてまいりたいと思います。


堀川委員 こちらも厳正な対処とおっしゃるんですけれども、一般的な対応ではこれを見抜けないことになっていると思うんです。しっかりした対応をお願いをしたいと思います。

 トラックドライバーの働き方、一連の取組は、やはりまだまだ不十分だと言わざるを得ないと思います。働く人の尊厳と人間らしい働き方のために、引き続きこの問題を取り上げていくということを申し上げまして、質問を終わります。