国会質問


東日本大震災の被災者が借りた災害援護資金の滞納額が65億8595万円(2023年9月末時点)に上り、返済期日を過ぎた件数のうち35・9%が滞納せざるを得ない状況にあります。日本共産党の堀川あきこ議員は9日の衆院東日本大震災復興・防災・災害対策委員会で、被災者の高齢化や収入減、病気による支出増加などが重なり、返済がままならない実態を示し、返済免除などの措置を求めました。
坂井学防災担当相は、市町村が被災者の償還金の支払いを猶予した場合は、県と国が市町村からの償還を猶予してきた阪神・淡路大震災での措置を参考に、政令改正を準備していることを明らかにしました。
内閣府の高橋謙司防災担当政策統括官は「経済事情の変化や病気になるなど、個々の事情により返済が厳しくなっている方がいる」と認めたうえで、市町村がやむを得ない事情がある場合には、償還金の支払いを猶予することができるなどと説明しました。
堀川氏は、低所得で返済が困難な人が同資金を利用しており、東日本大震災から14年がたつなか高齢化が進み生活再建が遅れれば、完済はより難しくなるなど、貸付制度の矛盾を指摘。23年もの長期にわたる返済請求は被災者への精神的負担にもなるとして、返済免除の対象を低年金の人や生活保護利用者に拡充するよう求めました。また、貸付制度の限界を認め、給付による支援を真剣に検討するよう要求しました。
(しんぶん赤旗2025年4月15日付掲載)より抜粋
議事録
堀川委員 日本共産党の堀川あきこです。
今日は、東日本大震災の災害援護資金についてお聞きをしていきたいと思います。
災害援護資金というのは、市町村を通じた被災者の生活再建のための貸付制度だというふうに認識をしています。東日本大震災から十四年目を迎えて、十三年の返済期限を迎える貸付金の滞納が今大きな課題となっています。
東日本大震災の災害援護資金の滞納状況について、内閣府から提供いただきました資料一を御覧ください。
この中で、(A)のところが返済が始まっている件数、(B)が滞納件数、その隣が滞納件数の割合で滞納金額というふうに続いているわけなんですが、この中でも、やはり、岩手県、宮城県、仙台市、福島県、ここの滞納額、滞納率が飛び抜けているというふうな実態にあるということです。
最近の報道によりますと、原則十三年の返済期限を猶予する場合、市町村が国への返済も延長できるようにするという方針が出されたというふうに報道があるんですけれども、詳細について坂井大臣にお伺いしたいと思います。
坂井国務大臣 東日本大震災の被災自治体からは、市町村が被災者に対し災害援護資金の支払いを猶予した場合には、国や都県が有する貸付債権についても同様にその返済を猶予されたいとの御要望を頂戴しているところでございます。
こうした御要望を踏まえ、現在、阪神・淡路大震災の際に講じた貸付債権の返済猶予措置を参考に、必要な政令改正に向けた準備を進めているところでございます。
堀川委員 ありがとうございます。 先ほどの資料にもあるんですけれども、東日本大震災における災害援護資金の滞納額、六十五億八千五百九十五万円ということで、かなりの額に及んでいるのが実態です。 滞納額がなぜここまで多いのかという見解についてもお聞かせください。
高橋政府参考人 お答えをいたします。災害援護資金の貸付けは、自然災害により被害を受けた低所得世帯に対しまして、その生活の立て直しに資するために行われるものでございます。貸付けを受けた後に、経済事情の変化や病気になられるなど、個々の事情により返済が厳しくなっている方がいらっしゃるものと承知をしております。
そのため、災害援護資金の貸付けを受けた被災者の方が災害、疾病、負傷、経済的困窮など市町村がやむを得ないと認める事情がある場合には償還金の支払いを猶予することができるほか、精神若しくは身体に著しい障害を受けたため償還することができなくなったと認められるようなときとか、破産手続あるいは再生手続の開始の決定を受けたときには償還を免除することができる。
さらには、これは東日本震災の特例として設けられておりますけれども、今申し上げましたような通常の免除事由のほか、貸付けを受けられた方が一定の無資力要件を満たす場合にも特例的に免除が可能となっておるところでございまして、こうした制度をきめ細かく御活用いただくことが重要であると考えております。
堀川委員 私は、この災害援護資金、制度として様々な矛盾をはらんでいるものだというふうに考えているんです。
滞納の要因の一つが被災者の高齢化にあるという指摘が様々な方からなされています。滞納率が四四・三%になる石巻市ですけれども、二〇二二年の時点で借主の平均年齢が六十一・六歳、六十五歳以上が四一%、七十五歳以上が二〇%以上だという現状でした。
この援護資金には所得要件があって、一人世帯では年間所得二百二十万未満、二人世帯は四百三十万未満ということで、低所得者向けの制度になっているというふうに思います。そのために、年金生活に入っても低年金の方が多い傾向にあるというふうに思うんですね。実際に、石巻市には、亡き夫の相続人であるお連れ合いの方がこの返済分も相続をされたということで、夫が死んで自分の年金しかない、どうすればいいのかというふうな問合せも来ているということです。
あの東日本の震災から十四年がたった今、被災者は高齢化をしています。元々、低所得で返済見込みの立ちにくい方たちが利用をしている、高齢化が進めば、完済するということがより難しくなっていくというふうに考えます。ここに制度の矛盾が表れているというふうに思うんですけれども、大臣の認識をお聞かせください。
坂井国務大臣 様々な御事情によって、当初に予定したとおりの返済が困難となっている被災者の方がいらっしゃるということは認識をしております。
災害援護資金制度は給付ではなく返済を前提とした貸付制度であることや、既に期限どおりに返済されていただいている被災者の方も大勢いらっしゃることを踏まえると、まずは返済に向けて御努力いただくことが原則ではなかろうかと思っております。
本制度では、災害援護資金の貸付けを受けた被災者が、先ほども政府参考人から申し上げましたが、疾病、負傷、経済的困窮などの事情がある場合には償還金の支払い猶予が可能であるほか、精神、身体に著しい障害を受けた場合や破産手続開始の決定を受けたときなどには償還の免除も可能となっております。
さらに、東日本大震災については、これら通常の免除事由に加えて、一定の無資力要件を満たす場合にも特例的に免除が可能となっておりまして、まずはこうした制度をきめ細かく御活用いただくことが重要ではないかと考えます。
なお、政府としては、例えば、災害救助法による現物給付、被災者生活再建支援金の給付等、給付による支援も行っているところでございまして、災害援護資金については、こうした既存の支援策と組み合わせて御活用いただくものと考えております。
堀川委員 もう一つ、この滞納の要因として、生活再建が遅れているということも挙げられると思います。
ある新聞記事の中で、家族四人で仙台市内のアパートに暮らす大型トラック運転手の男性の話が紹介をされていました。震災で自宅に大きな被害はなかったものの、日雇のアルバイトが激減をして貯金が底をつく中で、家具も壊れて、通勤用の車の故障も重なった、そこで、この災害援護資金を二〇一二年に百五十万借りたそうです。初めの六年は返済を猶予し、六年たった二〇一八年、市から督促状が届いて、半年で約十一万円の返済を求めるというふうな内容だったそうです。ただ、この男性の月収が十八万円で、お連れ合いの収入、月五万から八万円の収入の中で、家賃五万円、小学生と中学生の二人のお子さんの教育費もかかる、さらに、この男性は震災後に発症をしたリウマチとヘルニアを抱えておられて、治療費を払うと手元に一万円も残らないそうです。少額返済を利用されて、ぎりぎり返せる月五千円を返済しているということなんですけれども、返済額はまだ百万円以上残っているそうなんです。返済期限が今年、二〇二五年になるそうなんですけれども、完済するのは二十年ほど先になるというふうな話が紹介をされていました。
被災によって収入が減る、あるいは病気を発症する、なりわいの再建もなかなか進んでいない中で、被災者の生活再建が遅れるという現状がいまだにあるというふうなことだと思います。
低年金の高齢者もそうなんですけれども、低収入の方から返済を求め続けるというのは生活基盤を崩しかねないということが再三弁護士会からも指摘をされています。この指摘は非常に重要だと私は思いますし、本当にこれが被災者支援なのかという問いが生まれていると思うんですけれども、このことについても大臣の認識をお伺いしたいと思います。
坂井国務大臣 先ほども御答弁を申し上げましたけれども、基本的には、この災害援護資金の貸付けの制度というのは貸付けを前提とした制度ということでございますが、一定の場合には、先ほど申し上げましたが、支払い猶予でありますとか償還の免除が可能となっておりますし、また、東日本大震災につきましては、一定の無資力要件を満たす場合にも償還免除が可能とされているところでございますので、具体的に今御指摘いただいたその方がこの状況に該当するかどうかというのは今の段階で判断しかねますけれども、御相談いただいて、まずはこういった制度を適切に御活用いただくことが必要ではないかと考えております。
堀川委員 困難を抱えておられる被災者の方々に寄り添った支援策の在り方というのを、是非見直していただきたいというふうに思うんです。
先ほど来から免除要件について御説明をいただいているんですけれども、御説明いただいたように、免除となるのは死亡や重度障害などのケースになっています。東日本の場合は、無資力、経済的に返済が困難な場合による返済免除というのが特例的にあるというふうなことだと思うんですけれども、ただ、無資力の場合の返済免除というのは、返済期限十三年から更に十年間返済が困難となった場合というふうになっています。
ただ、実態を見ると、被災者の高齢化がある、生活再建の遅れなどによって、市町村もなかなか回収見込みが立っていないというのが現状です。二十三年間もの長期にわたって返済請求が来るというのは、返済が困難な被災者にとって精神的負担にもなっていくというふうに思うんです。
この免除の対象を、少なくとも低年金の方やあるいは生活保護受給者に拡充することが不可欠だと思いますけれども、いかがでしょうか。
高橋政府参考人 お答えをいたします。災害援護資金の貸付けを受けた方が経済的に困窮している場合には、市町村は支払いの猶予をすることができるということでございます。
その上で、先ほども大臣からも御答弁ありましたけれども、東日本大震災につきましては、東日本大震災の財政特例法におきまして特例措置が設けられておりまして、借受人が無資力又はこれに近い状態にあるため支払いの猶予を受け、また、かつ、最終支払い期日から、委員からも御紹介いただきましたけれども、十年を経過した後におきまして、なお無資力等の状態にあり、償還金を支払うことができる見込みがない場合について、償還免除の特例が設けられているところでございます。
御指摘いただきましたように、生活保護を受給されておられるなど経済的に困窮されている被災者の方におかれましては、こうした制度をきめ細かく御活用いただくことが重要であるというふうに考えております。
堀川委員 もう一つ指摘をしたいのが、被災市町村の負担についてです。 貸付けと回収を担う市町村の負担が本当に過大になっているんですね。宮城県の事例を紹介をしたいと思います。
仙台市ですけれども、回収業務期間十三年間以上を想定して、人件費十六億円、事務経費八億円、計二十四億円を見込んだ、二二年の十二月時点で正職員十人、会計年度任用職員七名だった体制を、二人増員をしているというふうな状況です。
塩竈市については、利用者が亡くなった場合の手続に物すごく頭を悩ませているというふうなお話を聞きました。国は、亡くなった場合、相続人に請求するよう指導をしているわけなんですけれども、相続人が十人以上いて確認作業に数年かかった事例もあったというふうなことをおっしゃっていました。 石巻市では、滞納額が十一億に上るわけなんですけれども、人件費を除く回収費用におよそ三億八千万円を見込んでいる、ただ、担当職員三人では窓口や電話対応が精いっぱいで、戸別訪問までなかなか手が回らないというふうな状況です。
事務負担と回収費用など、被災自治体の負担が過大となっています。利息分を管理費用に充てるということは前提になっているわけなんですけれども、東日本の場合では、連帯保証人をつけた場合は無利息になっておりまして、つけなかった場合にも一・五%の利息になっておって、利息で管理コストを賄うというのはほとんど困難なんですよね。
国として、債権の管理費用や人的資源など、市町村への支援を抜本的に増やすべきだと思いますが、いかがでしょうか。
高橋政府参考人 お答えをいたします。債権管理業務の長期化に伴いまして、被災自治体の方で御負担を感じられておられることについての問題意識は共有しているところでございます。
このため、債権管理業務を円滑に進めるためにも、こうした業務を担当されている自治体職員の皆様の御負担をできる限り軽減することが大変重要であると考えておりまして、内閣府といたしましては、例えば他の自治体における債権管理業務における取組事例を共有するなど、自治体による債権管理が円滑に進むよう支援をしていきたいと考えております。
また、東日本大震災につきましては、災害復旧等に従事する職員の人件費を震災復興特別交付税で支援するといった仕組み、制度もございます。実際に、この支援策を活用して債権管理業務に当たる職員を新規に採用していただいて取り組んでいただいている自治体もございますので、こうした制度についても是非御活用いただけるよう、私どもとしても周知に努めていきたいというふうに考えております。
堀川委員 ちょっと時間がないので次の質問を飛ばさせていただいて、その次の質問に移りたいんですけれども、この災害援護資金貸付けの目的は低所得者の生活再建を支援するということだと思います。ただ、今御紹介したように、生活再建はおろか、日々の生活の維持にも困窮を強いられている被災者に対して貸付金の返済を求め続けることが、本当に東日本大震災からの生活再建や被災地復興を支援することになるとはとても考えられないと私は思うんです。
被災自治体に対しても過大な負担が今発生をしているというふうな状況です。このことについて、復興大臣の認識を伺いたいと思います。
伊藤国務大臣 お答えを申し上げます。私も、四月一日にNHKの「クローズアップ現代」で災害援助資金についての報道をされた番組を全て見せていただいておりました。被災地の現場では極めて難しい対応を迫られているということを痛感したところでございます。何せ、お金を返してもらいに行く人も、そしてまた返さなきゃならない立場の人も、両者共に、このお金に手をつけている人たちもたくさんおられるという現場でございますので、本当に厳しいことだと思って見ておりました。
災害援護資金の運用に当たりましては、ただいま坂井防災大臣にも様々御配慮いただいていると思いますが、発災から十四年を経過した現在、被災した方々の状況は様々であります。
このため、被災自治体には、返済困難な被災者には最大限寄り添った対応をしていただくとともに、災害援護資金の返還について、それぞれの被災者の状況に応じ、猶予、免除など、きめ細かく対応していただくことが重要であると認識をいたしております。
これまで復興庁に対しましても被災地から様々御意見、御要望が多く寄せられておりまして、内閣府にもその旨伝えさせていただいて、今般、償還期限の延長に関する法令改正作業を進めていただいていることと承知をしております。
復興庁といたしましては、被災地に寄り添って御意見、御要望を聞き取って、関係省庁に情報を提供するなど、引き続き連携を取って、是非復興していくことができますように、一人残さずやっていけるように努力をしてまいりたいと思っております。
堀川委員 ちょっと時間が来ているので、もう終わらないといけないんですけれども、やはり災害援護資金の貸付制度というのはもう限界が来ているというふうに思います。従来の対応では解決できない課題がたくさんあるというふうなことを私は申し上げました。貸付けではなく給付による支援を真剣に検討すべきというふうなことを申し上げまして、質問を終わります。