国会質問


日本共産党の堀川あきこ議員は14日の衆院国土交通委員会で、政府の下水道管などのインフラ老朽化対策は的外れだとして、市町村の技術系職員の確保など抜本的見直しを求めました。
政府は2015年の改正下水道法で、腐食の恐れが大きい箇所は5年に1回以上点検すると規定。ところが、全国で発生している道路陥没のうち「腐食の恐れが大きい箇所」の陥没は1%未満で、ほとんどがそれ以外で起きていることが堀川氏の質疑への政府の答弁で明らかになりました。
「なぜこういう実態なのか」とただした堀川氏に、中野洋昌国交相は「陥没件数が少ない理由は腐食の恐れが大きい箇所の管路延長が少ないから」と全く的外れな答弁に終始。堀川氏は「実際の陥没の実態を見ると国交省の取り組みは外れている」と批判しました。
堀川氏は、下水道等の管理を担う技術系職員が一人もいない市町村が多くを占める日本地図を示し、「国交省の対策で技術系職員は増加しているのか」と質問。同省の塩見英之総合政策局長は「2005年当時の10万5187人から、最新のデータでは9万709人という状況」と答弁し、むしろ減少している実態が明らかになりました。
堀川氏は、技術系職員の課題は非常に重い課題だと指摘し、職員の確保を求めました。
(しんぶん赤旗2025年3月22日付掲載)より抜粋
資料
議事録
堀川委員 日本共産党の堀川あきこです。国土交通大臣の大臣所信について質疑を行いたいと思います。
埼玉県八潮市で起きました下水道管に起因する陥没事故は、全国に衝撃を与えました。まずは、トラックドライバーの方の一刻も早い救出に全力を挙げていただきたいというふうに思います。
下水道管路を始めとしたインフラ設備の老朽化対策についてお聞きをしていきたいと思います。
下水道法が二〇一五年に改正をされまして、その中で維持修繕基準というのが創設をされました。これが作られたのは、下水道管路の老朽化や腐食に起因した道路陥没が発生しているにもかかわらず、計画的な点検が十分に行われていなかった状況を踏まえて作られたというふうに聞いているんですけれども、下水道管路に起因する道路陥没をなくすことに目的の一つがあるというふうな理解でよろしいでしょうか。
中野国務大臣 二〇一五年の下水道法改正についての、特に維持修繕基準創設の目的の御質問をいただきました。
二〇一五年、下水道法改正により、維持修繕基準が創設をされました。これは、社会資本全体の老朽化が見込まれる中で、インフラの適切な維持管理について社会的な要請が高まっていたこと、そしてもう一つは、下水道管路の腐食等に伴う道路陥没が発生をしていたことなど、こうした背景を踏まえまして、予防保全の考え方に基づいて、持続的な下水道事業確立に向けまして計画的な維持管理を推進をしようということが、この維持修繕基準創設の目的ということでございます。
堀川委員 下水道管路に起因する道路陥没をなくすことも一つの目的だというふうに理解をします。
そのために、全ての下水道施設を対象にして計画的な維持管理の実施を規定するとともに、下水の貯留その他の原因による腐食のおそれが大きい下水道管路については五年に一回以上の頻度で点検を義務づけていて、二〇一六年度から取り組んでおられるということで間違いないでしょうか。大臣、お願いします。
中野国務大臣 もし不足がありましたら、参考人の方で補足したいと思いますけれども。
二〇一五年に改正をされました下水道法七条の三におきまして、下水道管理者は下水道を良好な状態に保つように維持をし、修繕をすべきという旨を定めたところでございます。
維持修繕基準の、どういう形でということの御質問かと思いますが、下水道法施行令第五条の十二に規定する維持修繕基準では、一つは、全ての施設について、その構造や流入する下水の量などを勘案をして、適切な時期に適切な方法により点検を行う、これは全ての施設について行うんだということを規定をした上で、このうち、腐食するおそれの大きい箇所につきましては五年に一回以上の適切な頻度で点検をするということが、この具体的な中身であるということでございます。
松原政府参考人 すみません、補足いたします。施行につきましては、二〇一五年でございます。
堀川委員 こうした取組が効果を上げているのかという検証が必要だと思っているんです。
資料一を御覧いただきたいと思います。これは、下水道管路に起因する道路陥没について、国交省がデータを取り始めた二〇〇六年度から直近の二〇二二年度までの数字をグラフで示しています。
東日本大震災のあった二〇一〇年度、二〇一一年度、熊本地震や鳥取県中部地震のあった二〇一六年度は数字が飛び抜けているわけなんですけれども、それらを除けば、陥没の発生は減少傾向にはあるんですけれども、大きく減少しているわけではないんですね。加えて言いますと、二〇一五年の、社会資本メンテナンス元年以降も大きな減少にはなっていないということなんです。
二〇二一年度と二〇二二年度の道路陥没件数の総数と、そのうち腐食のおそれの大きい箇所での陥没の件数、パーセンテージを教えてください。
松原政府参考人 お答えをいたします。二〇二一年度に発生しました下水道管路に起因する道路陥没件数の総数は二千六百七十九件、そのうち腐食のおそれが大きい箇所で発生した件数は十七件、割合として約〇・六%でございます。
また、二〇二二年度に発生した下水道管路に起因する道路陥没件数の総数は二千六百二十五件、そのうち腐食のおそれが大きい箇所で発生した件数は十一件、割合で約〇・四%でございます。
堀川委員 道路陥没の詳細なデータを取り始めたのが二〇二一年度からということなので、詳細なことはこの二年分しか分からないんですけれども、今あったように、陥没を起こしているのは、圧倒的に、腐食のおそれが大きい箇所ではなくて、それ以外の箇所にあるということなんですよね。二〇二一年度以前もこの傾向に大きな変化はないというふうに思います。
大臣、なぜこういう実態になっているのでしょうか。
中野国務大臣 先ほど、下水道管路に起因する道路陥没件数の総数のうち、腐食のおそれが大きい箇所で発生した件数の割合は、二〇二一年度で約〇・六%、二〇二二年度で約〇・四%であった旨の答弁がございました。全国の下水道管路のうち、腐食のおそれの大きい箇所に当たる管路延長がどのくらいあるかということで考えますと、この延長の割合は全体の約〇・七%ということでございます。
腐食のおそれが大きい箇所での陥没件数が少ない理由は何なのかということは、腐食のおそれが大きい箇所に当たる管路延長の割合自体も、管路延長が少ないということも理由なのではないかというふうに考えております。
堀川委員 先ほど言っていただいた二〇二一年度の二千六百七十九件、二〇二二年度の二千六百二十五件なんですけれども、規模が小さいものもいろいろあるんですが、深さ百センチの陥没もあるんですね。二〇一六年度から二〇二二年度までの、深さ百センチを超える陥没の数、人的、物的被害の数、その内容はどうなっているでしょうか。
松原政府参考人 お答えをいたします。二〇一六年度から二二年度までの七年間に発生した下水道管路に起因する道路陥没件数の総数約二万二千件のうち、深さ百センチを超える陥没は六百六件でございまして、割合は約二・八%でございます。
なお、下水道管路に起因する道路陥没により、物損事故や人身事故に至った件数及びその内容については把握をできておりません。
堀川委員 被害の内容を把握されていないということなんですけれども、例えば二〇二二年六月八日、埼玉県の川島町では、直径一・五メートル、深さ三メートルの陥没が発生をしまして、八十代の男性が乗っていた自転車ごと落下するというふうな事故が起きています。二〇二〇年七月二日に名古屋市西区で発生をした陥没では、ごみ収集車の左の後輪が穴にはまるというふうな事故も起きています。
大臣に初めに確認したように、下水道に起因する道路陥没をなくすことが下水道メンテナンスの目的の一つのはずです。人的、物的被害が起きていますし、こうした事故が起きていること、そして下水道管路が小さくても破損をしているということは、国民生活にそれだけ支障を来しているということだと思うんです。これは一件でも起きてはいけないことだと思うんですが、大臣、いかがでしょうか。
中野国務大臣 お答えを申し上げます。全国の道路陥没の状況の御指摘かと思います。
今回、国土交通省では、埼玉県八潮市における道路陥没事故を受けまして、有識者委員会というのを設置をしたところでございます。大規模な下水道の点検手法の見直しを始め、施設管理の在り方などについてまさに御議論をいただいているというところでございます。
国土交通省としては、今回と同様の大規模な道路陥没を未然に防ぎ、国民の安全、安心が得られるように、委員会での議論も踏まえまして、必要な対策はしっかりと検討、実施をしてまいりたいというふうに考えております。
堀川委員 国交省は、二〇一五年以降、この維持修繕基準に基づいていろいろな点検をされてきて、腐食のおそれの大きい箇所については五年に一回以上のペースで点検をして、緊急度判定をして対応してこられた。これ自体は必要なことだったと思うんですけれども、ただ、実際の陥没の実態を見ると、この間の国交省の取組というのがちょっとやはりずれているんじゃないかなと思わざるを得ないんですね。
八潮市の事故も受けていろいろな見直しがされるというふうに言われていますけれども、大規模な陥没となった八潮市のケースだけではなくて、規模の大小にかかわらず、全国の道路陥没の実態を踏まえた見直しが必要だと思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。
中野国務大臣 今までの法制度におきますと、特に腐食のおそれの大きい箇所について五年に一回以上のということでやってまいりました。あわせまして、全ての施設について、基本的には、やはり構造や流入する下水の量などを勘案をして、適切な時期に適切な方法により点検をしてくださいということも、併せてそれはお願いをしてきたところではあります。
いずれにしても、今、有識者委員会での議論をしているところでもございますので、こうした議論も踏まえながらの対策ということで、しっかり検討、実施をしてまいりたいというふうに思います。
堀川委員 引き続き、このことは議論をしたいというふうに思います。
下水道管路を含め、インフラの老朽化対策を進める上で、先ほど来からも指摘がありますとおり、地方自治体の技術系職員の確保というのが大きな課題になっています。この間、この技術系の職員が一貫して減少しているということは我が党も再三指摘をしていますが、この技術系職員が、先ほどたがや委員からもありましたとおり、一人もいない自治体もあるということです。
全国の市町村で技術系職員が一人もいない市区町村は幾つで、全自治体の何%になるか、お答えをお願いします。
塩見政府参考人 お答えを申し上げます。市区町村におきます土木技師それから建築技師の職員の数につきましては、総務省の方で毎年まとめておられる地方公共団体定員管理調査というものがございます。こちらのデータによりますと、市区町村における技術職員の人数が一人もいないという市区町村は、二〇二三年四月時点で申しますと四百三十五団体、割合は、千七百四十一団体のうち四百三十五団体ということですので約二五%でございまして、さらに、もう一年新しい二〇二四年四月時点ということで申しますと四百四十団体、割合で申しますと約二五%という数字になってございます。
堀川委員 二〇二四年になると更に増えている、全国の四分の一の自治体でゼロになっているということだと思います。 その数字を、資料二で、地図に落としてお示しをしています。改めて地図で見ますと、技術系職員ゼロの自治体が本当に全国に広範囲に広がっているということが分かると思います。
この技術系職員がいない自治体は、インフラの点検、調査、維持管理、修繕等をできているんでしょうか。
塩見政府参考人 お答え申し上げます。インフラを管理する自治体、特に小規模な市町村におきましては、先生御指摘のとおり、技術系職員が一人もいないということなど、全体として人材の不足が生じております。
こうした技術系職員がいない自治体でどのようにインフラ関係の業務を行っているかということでございますけれども、私どもの方でヒアリングをしてみましたところ、例えば、橋梁の補修などのように技術力を要する業務を行います場合には、県などの技術系職員の助言をもらいながら事務系の職員が実施しているという事例がございます。また、比較的技術力を要しない点検あるいは修繕等の業務発注の仕事、簡単な検査、それから巡回、こういったような仕事につきましては、事務系の職員が自ら行っているというようなお話がございます。
また、別の自治体の例もお聞きしてみましたところ、事務系の職員が、先ほど県の技術系職員から助言をもらっていると申しましたけれども、県ではなくて、技術的な知見を持っている民間の団体等に助言の業務を委託をした上で、その助言の下にそういった仕事を実施しているというようなお話がございました。
これら二つの事例は、いずれも事務系の職員が技術力のある方からアドバイスを受けて仕事をやっているというものでございますけれども、国土交通省としましては、アドバイスを受けてということよりは、むしろ技術的知見のある方が直接携わる形が望ましいと思っておりまして、先ほど来議論に出ておりますインフラ群のマネジメント、群マネというものを推進をしております。
これは、間接的なアドバイスということではなくて、技術力のある技術職員がチームをつくりまして、このチームが主体となりまして、修繕の設計であるとか工法の検討であるとか、こういった技術力を要する仕事に当たってもらうことを期待するものでございます。 こういった取組を更に推進してまいりたいと存じます。
堀川委員 今御答弁のあった、やはり事務職員ではなくて技術的職員が任務に当たるのが望ましいということは、重要な答弁だというふうに思います。群マネについてはまた議論をしたいというふうに思うんですけれども、やはり技術系職員が一人もいない市区町村は財政的にも厳しいところがほとんどで、いろいろ、群マネだったりとかデジタル化だったりとか言われますけれども、そうした方向で本当にいいのかということがあると思うんです。
二〇一三年の新水道ビジョンには、こうした指摘があります。近年の地方公共団体の水道従事職員は減少傾向にあり、仮にこの傾向が続くとすれば、将来の発生が懸念される東海地震、東南海・南海地震、首都直下地震などによる大災害時、全国の水道事業者等が、自らの平常時の事業を継続しつつ、被災事業者に対して迅速かつ適切な支援を行うための人員を確保できるかどうか、非常に大きな懸念を抱かざるを得ませんというふうに記されています。
実際に能登では、ここで懸念されていたことが起きているんですよね。人が確保できずに業務委託したんだけれども、それによって自治体職員のスキルや経験は蓄積されずに、災害時の対応が物すごく大変になっていると。そして、ほかの自治体から職員が派遣されるわけですけれども、その派遣元の事業体では通常業務をやる人員が不足するという事態になっています。
先ほど来、鳩山委員、たがや委員の質問で、国交省としての対策をるる紹介されましたけれども、これで技術系職員は増加しているのでしょうか。大臣、お答えをお願いします。
塩見政府参考人 技術系職員が増えているのかという事実のお尋ねかと存じますが、私どもが把握している技術職員の人数でございますけれども、二〇〇五年当時でいいますと十万五千百八十七人ということでございました。その後、自治体の職員全体の減少の中で技術職員も減少し、おおむね二〇一五年頃にボトムを打ち、その後少し増加をしておりますけれども、今は、最新のデータでいいますと九万七百九人という状況にございます。
堀川委員 もう質疑時間が来ましたので終わりますけれども、この技術系職員の課題は大変に重い課題だというふうに思っております。引き続き議論をしていきたいと思います。以上です。