国会質問

第217通常国会(2025年)

国責任で家賃補助を、セーフティネット制度に―国交委


 日本共産党の堀川あきこ議員は19日の衆院国土交通委員会で、住宅セーフティネット制度を巡り、国の責任で家賃補助などの政策を拡充するよう求めました。

 堀川氏は、阪神・淡路大震災で60歳以上の高齢女性の死者が多かった原因として、耐震性が不十分な民間の低家賃住宅の全半壊率の高さなどを挙げ、「非正規労働率も高く、低年金者が多い女性は住宅困窮者となる傾向が強い」と指摘。ジェンダー視点に立った住宅政策を求めました。

 昨年の通常国会で成立した改定住宅セーフティネット法は、低所得者や高齢者らを「住宅確保要配慮者」として居住の安定を図るよう定めています。堀川氏は「要配慮者」数を国交省は把握しているのかと質問。楠田幹人住宅局長は「総数を示すのは難しい」と述べ、統計を取っていないことを認めました。

 セーフティネット制度を使って要配慮者が入居できた実績をただした堀川氏に対し、楠田局長は「把握は困難」だと弁解。堀川氏は「要配慮者の数も把握せず、住宅セーフティネット制度の活用を検証する仕組みもない」と批判しました。

 住宅セーフティネット法は家賃低廉化補助制度を設けています。堀川氏は補助制度を活用した自治体は全国で27(23年)にすぎないと指摘。家賃値上げが相次ぐ一方、今後、単身世帯が増える中で「暮らせる家賃をどう保障するか、国として検討すべきだ」と主張し、低廉な家賃を保障する公営住宅を再構築し、家賃補助制度を国の責任でつくるべきだと強調しました。

(しんぶん赤旗2025年3月21日付掲載)より抜粋

議事録

堀川委員 日本共産党の堀川あきこです。阪神・淡路大震災から今年で三十年。この節目に、様々な検証が今行われています。   神戸新聞が、阪神・淡路大震災の死者数六千四百二人のうち、女性の死者数は男性の死者数よりも九百六十七人多かった、この事実を基に、特集を組まれていました。

 亡くなられた方の中で、特に割合が高かったのが六十代以上、そのうち六割が女性でした。死因の七割が窒息、圧死。建物の倒壊などによって下敷きとなって命を奪われるというケースです。なぜ六十歳以上の高齢の女性が多かったのか、ちゃんとした分析は今のところされていないんですけれども、考えられる理由として、単身の高齢女性は相対的貧困率が高い層であって、社会的、経済的理由によって弱い家に住まざるを得なかったというふうなことが挙げられています。

 都市住宅学会の調査によりますと、この震災で約二十五万戸の建物が全半壊をして、戸建ての全半壊率が三八・五%だったのに対して、長屋は六三%、文化住宅などの共同低層住宅が五七・七%と、被害が大きかったのは、こうした耐震性を十分に備えていない民間の低賃貸住宅でした。

 兵庫県の復興誌を見てみますと、神戸市で生活保護受給者の死亡率が市民平均の五倍近かったことから、所得の違いから生じた住宅格差が生死を分けたというふうに指摘があります。

 災害は、平時の社会のもろい部分がどうしても露出をします。非正規率も高く、低年金の多い女性は住宅困窮者となる傾向が強いことを物語っていると思いますが、大臣のお考えをお聞かせください。


中野国務大臣 御指摘の非正規労働者や低年金の者ということでございました。関係省庁の調査によりますれば、非正規労働者のうちの女性の割合は約七割ということでありますし、六十五歳以上の老齢年金受給者のうち年間の公的年金額が七十五万円未満の者の割合も、男性が一割以下であるのに対し、女性は二割を超えている、こういう状況であるということでございます。

 いずれにしても、やはり、こうした非正規の労働者の方や低年金の女性の方を含めまして、住宅に困窮をする低額所得者の皆様が安心して暮らせる住まいを確保するということは、住宅政策上重要な課題であるというふうには認識をしております。


堀川委員 女性、特にシングルの女性は、結婚すれば住宅の確保ができたけれども、そうした生き方が既定路線とされていて、支援制度の枠から外れてきたというのが現状だと思います。  現在、公営住宅も、家族向けのものが多くて、倍率も高くてなかなか入れない。民間の賃貸も、家賃が高くて大変苦しい実態があります。住宅の確保に不安を覚える、実際に困難を抱えているという女性が多数いるということが、この間あらゆる団体の調査から上がっています。ジェンダー視点に立った住宅政策を引き続き求めていきたいと思いますし、議論を続けたいというふうに思っています。

 今日は、住宅セーフティーネットの制度についてお聞きをしていきたいと思います。住宅セーフティーネット法では、住宅が国民の健康で文化的な生活にとって不可欠な基盤だとして、低額所得者や高齢者などを住宅確保要配慮者として、居住の安定について定めています。

 まずお聞きしたいんですが、この住宅確保要配慮者の数、国交省は把握しているでしょうか。


楠田政府参考人 お答えを申し上げます。委員御指摘の住宅セーフティーネット法におきましては、住宅確保要配慮者といたしまして、低額所得者、被災者、高齢者、障害者、子育て世帯など、民間賃貸住宅市場におきまして自力で適正な住宅を確保するということが困難となり得る方々の属性を類型的に規定をしているところでございます。

 お尋ねの住宅確保要配慮者の具体的な人数等でございますけれども、例えば高齢者は三千五百九十三万人、生活保護を受給している低額所得世帯は百六十四万世帯などとなっておりますけれども、これら複数の属性に該当する方々もいらっしゃいますので、住宅確保要配慮者の総数をお示しするということは難しい状況でございます。

 また、今申し上げた数字につきましては、高齢者、低額所得者など住宅確保要配慮者の属性に該当する数字ということでございまして、実際に住宅に困窮をしている方々ということの数ではございません。こうした方々が住宅に困窮しているかどうかということにつきましては個々の状況によって異なりますので、住宅に困窮する世帯の数を統計的に把握することもなかなか難しいというのが実情でございます。


堀川委員 国として統計を持っていないという答弁だったというふうに思います。   資料一に、国立国会図書館が出している表を引用しまして、要配慮者の数をお示しをしています。ちょっと時間の関係上、数字は飛ばさせていただきますけれども、これはあくまで目安であって、全ての方がセーフティーネットを希望されるとも限らないわけですが、一方で、公営住宅、セーフティーネット登録住宅というのが、それぞれ二百十二万戸、登録住宅が約九十万戸ということで、この大きな差を見ますと、安全と質が確保された住宅を十分に確保できていると言えるのか、疑問を抱かざるを得ません。

 時間の関係で次の質問に行きますけれども、この住宅セーフティーネット制度、様々な制度を持っていらっしゃいますけれども、要配慮者がこの制度を使って入居できた実績、国交省は把握されていますでしょうか。


楠田政府参考人 お答えを申し上げます。委員御指摘のとおり、セーフティーネット登録住宅につきましては、この三年間で約七十万戸から約九十万戸に増えております。住宅確保要配慮者の居住の安定確保に一定の役割を果たしてきたというふうに考えております。

 一方で、お尋ねのございました住宅確保要配慮者の入居実績でございますけれども、セーフティーネット登録住宅自体が要配慮者であることを理由に入居を拒まない賃貸住宅でございまして、入居時にあえて要配慮者であるかどうかということを本人に確認するということは必ずしも適切とは言えないということでございますので、そのような確認は行っておりませんで、要配慮者が実際に入居した数を定量的に把握するということは難しいというのが実情でございます。

 引き続き、この登録住宅の拡大を図ることによりまして、住宅確保要配慮者の居住の安定確保にしっかり努めてまいりたいと考えております。


堀川委員 要配慮者の数もつかまない、そのセーフティーネットの活用について検証する仕組みが今国交省にはないということだと思います。

今後、この要配慮者、単身高齢者世帯がどんどん増えていくということは国交省も認識されているというふうに思いますし、このセーフティーネット制度の活用というものが、ニーズが高まっていくということは認識をされていると思います。

その中で、公営住宅がどんどん少なくなっている一方で、民間の賃貸物件を増やしていくというふうな方向しかないと思いますが、岩盤と言われていた家賃の高騰が今全国で起きています。しかし、家賃低廉化の補助制度はあるが、実績でいうと、令和五年度で補助制度を活用した自治体はたった二十七自治体というふうになっています。低廉な家賃の賃貸住宅を必要とする方は今後増えていく一方で、家賃の高騰が起きている。

この家賃の低廉化の制度をどうやったら機能させることができるのか、暮らせる家賃をどう保証していくのか、国として検討が要ると思いますが、いかがでしょうか。


中野国務大臣 お答え申し上げます。低廉な家賃のセーフティーネット登録住宅の供給を促進をするということで、御指摘の大家さん向けの支援制度を創設しまして、これは家賃の低廉化に取り組む自治体に対して国が補助を行っております。

自治体による本制度の活用を促進をするために、これまでに、例えば補助対象期間の延長など制度を拡充をしたり、あるいは首長への直接訪問による働きかけなど、継続的に行ってまいりました。

現状、この三年間で新たに二十の自治体が制度を創設をいたしました。現時点では、横浜市、福岡市、京都市など、五十七の自治体で家賃低廉化制度が設けられているところでもございます。

今後も、本年秋頃に施行予定の改正住宅セーフティーネット法の説明会など、あらゆる機会を捉えて、自治体に対して、この家賃低廉化制度を繰り返し周知をしてまいりたいと思いますし、民間賃貸住宅だけではなくて、URですとか公社の賃貸住宅での活用も含めて、是非積極的に活用していただけるよう働きかけてまいりたいというふうに思っております。


堀川委員 時間なのでもう終わりますけれども、家主の善意に頼るセーフティーネットのみでは限界が来ているというふうに思います。低廉な家賃がちゃんと保証される公営住宅を再構築をしつつ、国の責任による家賃補助制度をつくるべきということを求めまして、質問を終わります。